CGMと2ちゃんねる

 「Consumer Generated Mediaのアイデア募集」というお題をゼミでブレストしてきました。具体的にはコミックを素材として利用者が「何か」を作れるようにしたいが、「何か」って実際のところなんでしょうね、というお話です。さらに、その「何か」を簡単に作れるようにするためには、どういう研究が必要かなどを見通すところまで一応含めています。ここではアイデアというか妄想なので、実運用における著作権云々はとりあえず保留です。

 長い前置きでしたが、結論としては「2ちゃんねる」や「にこにこ動画」にアップされているコンテンツを見習え!でした。ひとつには、彼ら、彼女らのつくる様々な二次創作のクオリティやら発想には驚かされるわけで、その辺を見習っていくのがオーソドックスだろう、という身も蓋もない話です。もうひとつには、お題が提示されるとそれに見合った情報が集積されていくという情報集積力をリファレンスにするべきという話です。例えば、ありえない自販機画像というお題で、きわめてセマンティックレベルの高い画像が集まるなどです。

 先ほどから具体的な話が出てこない言い訳をしておきます、蛇足ですが。単に、アイデアをパクられたらやだな、というだけです。アイデアの話には金出先生の本におもしろい話があるので引用しておきます*1

 「ドクター・カナデ、あなたの言うようにアイデアをオープンに話したら、他人に盗用されてしまうではないか」

 研究者や企業の人たち、それから学生からも言われることがある。私は、そういう人には、次のように、三つの場合に分けて考えてみようと答える。

 1 相手はすでに知っていた もともと知っていたのだから、たいした損害はない。せいぜい、相手を元気づかせた程度である。

 2 相手はまだそのアイデアを知らなかったが、全然興味が無くて忘れてしまったか、聞いたことにしたがって何か始めたがたいしたことはできなかった――何の損害もないし、後者の場合には、あなたがいいことをすれば彼はあなたを尊敬するだろう。

 3 相手はまだ知らなかったが、自分が言ったことで、相手が自分よりも先にいいことをやってしまった。

 問題になるのは3の場合である。一番まずい。「そこで」と、私は学生たちに言う。

 「相手は知らなかった。ということは、あなたよりもあとから考え、やり始めたということだ。しかも先にいいことができてしまった。これは何を意味するか。敵のほうが頭がよく、やり手であることが証明されたようなものだ。つまり、相手のほうが先に何かやる確率が、もともと高かったのだ。結局、言っても言わなくても、いずれ向こうに負けただろう。この場合は、あきらめた方がよろしい」

そんなわけで、アイデアは言わないよりも言ったほうがいいのだけれでも、やっぱり悔しいのであと13ヶ月ぐらいは伏せておきます。あと大人の事情もあるので。

 話を元に戻すと、CGM2ちゃんねるを見習えが仮の結論でした。これには続きがあって、仮に大会社で話を具体化するとしたら、役員にまで話を通さないといけないだろう。しかし、そういう人たちには「2ちゃんねるで流行っていますから」では通じないだろうという話です。役職がひとつ上の人には自分が直接説明できるだろうし、世代的にも近いことが多いので、共感も得やすいでしょう。しかし、さらに上の人には、間接的に説明せざるを得ないのです、多分たいていは。そういうわけで、上の人がさらに上の人を説得しやすいように、そういう観点で資料を作り、説明を考えなければならないだろう、という話になります。先は長いですね、という話でした。

*1:金出武雄、素人のように考え、玄人として実行する、P.98-99