AVM研究会での講演@九工大

ちょっと面白い研究発表があったので,その考察.

宮田,黒田,藤村,今村,"電子透かし技術を用いたJPEG画像符号化," 情処研報,2007-AVM-58,No. 11,pp. 61-66,9月,2007.

 まずは提案手法とその効果の概要.

  • アルゴリズム
    1. PCM後のDC成分をハフマン符号に変換する
    2. 量子化後のACに上記の符号を1ビットずつ埋め込む
    3. AC成分のみをハフマン符号化して伝送する
  • 埋め込みはAC係数について,0なら偶数に,1なら奇数に変更する方法
  • ビットレート時に2.59%の符号化効率の改善

 最初はなんでこうなるのか不思議だったけど,その理由は以下の通り.

 そもそも,JPEGのハフマン符号は高ビットレート,つまり係数が大きい場合の効率が悪い.すなわち,頻出度と符号長が著しくかけ離れている.その結果,符号化効率が悪い.

 AC係数の埋め込みによる符号化効率の低下よりも,高ビットレート時ではDC係数の符号化効率の低下の方が大きい.

 分かってしまえば当たり前なんだけど,なかなか面白かった.RD評価もしているんだけど,表記が一般的でないしQPを同じにしたときの対応がわからなかったのが残念.符号量 or PSNRを揃えて比較もしているのになぁ.

 JPEG以外の符号化方式での有効性はあるのか?

 例えばJPEG2000ではコンテキストモデリングを利用し,かつ算術符号化を利用している.係数が大きい場合でも適切な符号化が実現されており,改善の余地はほとんどない.したがって,有効性は低いと思われる.最近の符号化はどれもコンテキストモデリングを利用しているので,改善の余地はほとんど無いだろうな.残念.