MRC(Mixed Raster Content)の実現

まず,規格としては枯れた技術であるという認識でいる.現実問題として利用されているかと言えば,コンシューマとしては利用されていないと思う.Ricardo de Queirozさんが大御所の模様.研究としても一通りのことはざっと終わっている.http://image.unb.br/queiroz/papers/doccompression.pdf

MRCはファイルフォーマット(圧縮方式)というより概念の比重が高い.つまり,MRC方式ですよ,といっても中身はJPEG2000とJBIG2だったりする.標準化としてはJPEG2000 Part 6(ファイルの拡張子は.jpm)でなされている.また,一般にはTIFF画像として扱うことになる.

MRCが想定される画像として自然画像と文字画像の混在画像がある.自然画像は低解像度(LR)多階調画像としてJPEGJPEG2000で符号化する.一方で文字画像は高解像度(HR)2値画像としてJBIG2などで符号化する.ここで要となるのは解像度が異なることであり,自然画像を適切に低解像度化できる点にある.なお復号時にはLRをHRと同じ解像度に変換し,透過処理を適用する.

MRCを利用するためにはJPEG2000とJBIG2のエンコーダが必要になるが,これは敷居が高い.すなわち使いやすいエンコーダが入手できない,フリーのエンコーダがない,ビュアーが普及していないなどである.さらに,MRCに対応したTIFFビュアーが普及していない.

ところで,PDF(Portable Document Format)はVersion1.4からアルファチャンネルによる透過画像がサポートされた.これは,PDFでMRCと同様の概念が実現できることを意味する.なお,PDFのバージョンはAcrobatAdobe Readerのバージョンとは異なり,PDF1.4はAdobe Reader 5以上で閲覧可能である.また,PDFの仕様は公開されている.http://partners.adobe.com/public/developer/en/pdf/PDFReference.pdf

予備実験によると,PDFでは解像度の異なる画像を重ね合わせる透過処理も実現可能である.ただし仕様では,どのような解像度変換フィルタを適用するかは実装依存であるとしている.JPEG2000やJBIG2の敷居が高いことに変わりないが,PDFではJPEGPNG,MRやMMRが利用可能である.符号化効率の低下に目をつぶれば実用的な解である.とくに,文書画像にJPEGを適用してモスキートノイズを生成するより,はるかにリーズナブルである.

まとめると,MRCはPDFを出力形式とすれば今すぐにでも実現可能である.