複数SDを合成したHDの視覚品質は?

KDDI研究所の研究で,「SDのMPEGを合成してHDの動画像を生成できないか」というものがある.先日のFITで話を聞いているときに思いついたで,HD動画像にROIを設定すると視覚品質はどうなるか,という確認実験.

ROIとはReagion Of Interestの略で.画像中の一部の領域だけ高品質化すること(逆にROI以外の品質を低下させること).ROIと合成の関係は以下の通り.1台目のSDカメラで全体を撮りつつ,2台目のカメラでROIに相当する対象を撮る.2つを合成して,ROIはHD解像度,その他はSDを単純に拡大した画像とする.

発表会場にいたどこかの教授によると,画面内で解像度が異なると人は不快に感じるらしい.一方で,ズームイン・ズームアウトによるモザイク画像はROIだけ高解像度になるのだが,これは(不快ではなくて)芸術的な感じになる,らしい.後者の方が納得できるのだが,これは静止画像の話.動画像にするとどうなるのか.

動画像でROIを適用するのは3年前に研究室で同期がやってた.その時の提案では,ROIの境界はなだらかに品質を落としていく方が(同じビットレートの時に比較すると)視覚品質が上がる,というものだった.ちなみに動画像はSD.つまり,導き出した仮説は,HDサイズだけどROI以外はSDの拡大,ROIはSDを埋め込む,として生成したHDもそこそこ見られる,というもの.

ちょっとHDのテストシーケンスの取得に手こずっていたのだが,実験してみた.実験に利用した画像は720p@50fps(1280x720 progressive)を504枚.ROIは画像中の「手」を中心に560x420の大きさで設定.非ROIは5x5のローパスを適用して低解像度化.

1フレームだけ抜き出してみると下の通り.実際動画像で見てもあまり違和感を感じない.ただ,よく見れば解像度が落ちていることに気が付く.HDコンテンツばかり目にするようになると目が慣れていって,似非HDコンテンツは見破られる可能性大だな.普段からQVGAVGAは拡大表示してても違いがわかるし,704x396のHD画角でもVGAと解像感に違いを感じてる.

仮の結論としては,SDを合成したHD動画像は見られる(見るに堪える品質を有している),ということ.

いくつか問題があって,実は50fpsで再生できる環境がない.PCで再生したのだが20fpsしか出ていない気がする.これだと静止画を評価しているのと大差ないのかもしれない.HDの研究するなら再生環境の整備が必須だなぁと実感.ROI境界でなだらかに劣化させるのはやっていない.これは境界が特に目立たなかったから.実はまだY成分しか解像度を落としていないので,UV成分はそのまま.入力がYUV420なので,そもそも1/4に解像度が落ちている.まぁ,あまり気にしなくて良いかなぁ.